繰り上げ返済は、したほうが良いのか?

繰り上げ返済の問題点

 

 

繰り上げ返済

「借金は悪」。

 

だから「お金が貯まつたら住宅ローンを繰り上げ返済しなさい」という常識があります。確かに、繰り上げ返済すればするほど支払利息を抑えられるので、総返済額が減るというメリットがあります。

 

しかし、貯まった何百万円かを繰り上げ返済に充てようと考えているなら、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。住宅ローン元本の返済は、繰り上げ返済する・しないに関係なく一定ですから、繰り上げ返済で節約できるのは金利分です。そこで、住宅ローンの金利よりも、高い利回りで運用できる商品がないかを考えてみるのです。

 

住宅ローンの金利が3%だとして、もし自分が年利3%超で金融商品などを運用できるのであれば、資金を繰り上げ返済にまわすより、運用したほうがトクになります。たとえば3500万のローンを35年で組み、5年後に資金500万を繰上げ返済して、期間は変わらず返済額を小さくするとします。これで節約できるのは年間約25万円です。

 

しかし、もし利回り10%の運用先があれば、500万×10%=50万の利益ですから、繰り上げ返済するより20万円以上トクをします。運用益には税金がかかりますから、こんなに単純ではありませんが、その500万円を運用にまわせば差額7%分が利益になるわけです。逆に、3%超の利回りを得られる運用先を知らない場合は、繰り上げ返済をしたほうがトクということです。

 

高額商品も同じこと

自動車などの高額品を買うときも同じです。たとえば200万円の車を全額キャッシュで買うか、オートローンを組んで買うかは、運用利回りと比較して決めます。キャッシュで買えば、ローンはありませんから支出は200万円です。仮に自己資金を使わず全額ローンで買い、オートローン金利が3.5%、5年返済という条件の場合、金利支払い額は5年間で18万3000円です。手元の現金200万円で年利10%のオフショアファンドを買い、複利で運用すれば利益は122万円です。オートローン金利を引いても100万円以上の利益になりますから、この場合、キャッシュで車を買うよりローンを組んだほうがトクということです。

 

これは、どのように配分すれば、もつとも資金効率が高まるかを考えてお金を使うということです。

 

 

必ずしもトクではない繰上げ返済

繰り上げ返済のウソ

 

繰り上げ返済と聞くと、賢い返済方法と思う方が多いのですが、本当にそうなのでしょうか?

 

たとえば、Aさんが4000万円の住宅ローンを35年間かけて支払い続ける、という住宅ローンの契約をしていたとします。ところが、Aさんは思ったよりも収入が上がって生活に余裕ができたため、契約してから25年後に、すなわち、予定より10年早く4000万円の住宅ローンを完済することができました。これが繰り上げ返済です。

 

繰り上げ返済を行なうと元金を減らすことになり、結果的に、住宅ローンとして支払うはずだったその元金の金利負担分か減っていきます。当然、Aさんのように当初の予定より10年も早く返済できたような場合には、予定の返済額より実際に支払った金額は少なくなるため、借り手からすれば、余計なお金を払わずにすんだことになります。このため、できるだけ早く繰し上げ返済したい、と考えている人は多くいます。

 

最近、この繰り上げ返済の人気がさらに高まっているようです。これは、低金利が長引き、預金や投資で利益を得ることが難しい状況にあるため、資産運用の観点から、まずは惜金を減らすことが大事である、といわれているためです。

 

 

団体信用生命保険を中心に考えれば・・・

繰り上げ返済をすれば支払い総額が減るので、トクのような気がします。前述したAさんのケースのように、当初の予定よりも収入が上がり、予定外の出費などもなかったような場合には、資産運用の観点からも有効でしょうし、気持ちもとてもラクになるでしょう。

 

しかし、繰り上げ返済をしても、トクにならない場合もあるのです。住宅ローンを組んだとき、団体信用生命保険に加入した人は、少し違う視点で考えることも必要になります。この保険では、住宅ローンを借りた人が死亡したり、高度障害状態になるなどでローンを返済できなくなると、残ったローンを消滅させるために保険金が支払われます。一般の保険金は指定受取人に直接支払われますが、団体信用生命保険の場合には、ローンの残高を返済するという方法でしか支払われません。

 

これは、繰り上げ返済をして間もない時期に住宅ローンの契約者が死亡したり、高度障害状態になってしまった場合、繰上げ返済をしていなかったとしてもローンの残高は消えるということです。ですから、ローンの消滅という点だけを考えれば、「繰上げ返済なんかしなければよかった。損をした」という不公平感が出てくるケースもあります。

 

もともと住宅ローンの契約は、数千万円という金額を長い期間をかけて返済し続けることを想定して結ばれています。契約書に記載されたとおりに返済し続けていれば、突然早期返済や一括返済を迫られることは、まずないはずのしくみです。団体信用生命保険に加入していれば、当初の計画どおりに返済していけばよいでしょう。急いだり、ムリをしたりして繰上げ返済を行なうと、かえって悪い状況となる場合も考えられます。

 

たとえば、団体信用生命保険への加入の有無にかかわらずいえることですが、繰上げ返済だけを目指して生活費を極力切り詰めたり、仕事を掛け持ちしたりしたものの、結局、住宅ローンの契約者が死亡してしまった場合、残された家族は後悔するのではないでしょうか。また、繰上げ返済に貯金の大部分を回したために、入院費や手術費がない、などの緊急事態も考えられます。

 

 

繰り上げ返済よりもお得な『借り換え』!?

借り換え

 

繰り上げ返済以外に、住宅ローンの月々の負担を減らす方法として、「借り換え」という方法が挙げられます。借り換えとは、今組んでいる住宅ローンから、別の金融機関の住宅ローンに乗り換えることを言います。

 

日本には数多くの金融機関があり、住宅ローンを取り扱っているところだけを挙げても1200社をゆうに超えます。各社で複数のローン商品を取り扱っているので、私たちに用意されている選択肢はほとんど無限にあるといっても過言ではありません。ですから、よくよく探せば、今組んでいる住宅ローンよりも条件の有利な商品が見つかる可能性も、非常に高いといえます。

 

時間の経過とともに金利は変動しているため、住宅ローンを組んでから時間が経てば、以前の住宅ローンより魅力的な金利のローンが新たに登場していたとしても、不思議はないでしょう。しかも今は史上空前の低金利時代です。そのように考えていくと、今の住宅ローンに問題を感じているなら、別の住宅ローンに借り換えるというのは、理に叶った考え方なのです。

 

金利引き下げの可能性

ただし、実際に借り換えをする前に、やってみていただきたいことがあります。それは、今の住宅ローンを組んでいる金融機関に、「借り換えを検討中であること」を匂わせることです。実はこれは非常に有効的なのです。

 

匂わせるというとなんだか難しそうですが、住宅ローンの減額申請の相談などに赴いて、その中で「今のままだときついから、借り換えも考えているんです」といってみるだけでOKです。同一金融機関では借り換えはできませんし、金融機関は顧客を失いたくないと考えているので、うまくすれば「じやあ、金利を少し下げてあげましょう!!」という具合に話が進むこともあります。もちろん、絶対ではありませんが、試す価値は十分にあるでしょう。

 

借り換えは手間やコストがかかる

住宅ローンの借り換えは今や常識になりつつありますが、借り換えの経験がある方は、恐らくごくわずかでしょう。そこで、借り換えの基礎知識をここでご紹介しておきます。

 

まず、借り換えの仕組みについてです。借り換えをする際に最初に行うのは、どの金融機関の住宅ローンに換えるかを決めることです。決めたら、新規で住宅ローンの借入をする時と同じように、審査を受けます。審査される項目は、年収や雇用の形態、健康状態、住宅の担保価値などです。

 

最初の住宅ローンの審査では問題なく通ったとしても、状況が変わっている場合(たとえば独立して自営業者になったなど)、審査に落ちて、借り換えができないこともあります。審査を無事通過したら、新しい金融機関にお金を借りて、最初に組んでいた住宅ローンの残高を完済します。

 

その後、新しい金融機関に借りたお金を返す、つまり住宅ローンの返済を行っていくことになるわけです。なお、仮に複数の住宅ローンを組んでいた場合は、すべてを合わせて借り換えをするのが原則で、一つのローンだけを借り換えるということはできません。

 

登記費用などコストはかかる

また、借り換えというのは住宅ローンを組み直すということですから、保証料や事務手数料、登記費用なども新たにかかり、コストの負担はかなり大きくなることを忘れてはいけません。このコストの問題に加え、手続きの面倒くささもあり、借り換えを敬遠する人もいますが、それはもったいなさすぎます。

 

今は金利条件の非常によい住宅ローン商品も多いので、借り換えでトクする可能性は大いにあります。ローンが重荷の人は、ぜひ検討すべきでしょう。

 

 

借り換えでトクする人の 3つの条件とは?

借り換え条件

 

借り換えを望む人は「金利が低くなること」「返済が少なくなること」を期待しているのが大半です。

 

2020年1月の段階においても金利はまだ上昇局面に入っていないので、金利上昇に備えて借り換えをしている人は、現時点ではかなり少数派だということでしょう。ただし、金利を低くして、月々の負担や返済総額を減らしたいという人でも、条件次第では借り換えで損をする場合があります。

 

たとえば、もう間もなく完済する人は、わざわざ高いコストを払って借り換えるより、多少金利が高くても今のままで返済したほうが安くつくかもしれません。また、借り換えをしても金利が大して下がらなかったとしたら、やはりコストの分、高くついてしまうリスクがあります。

 

残高・期間・金利差に注目

そこで、一般によくいわれる、借り換えを検討すべき人の条件を挙げましょう。

 

住宅ローンの残高が1000万円以上ある
返済期間が10年以上残っている
借り換え前と後の金利差が1%以上ある

 

上記の3項目のうち、いずれかに当てはまれば、コストを支払ってでも借り換えをするメリットは十分にあるといわれます。この結果からもわかるように、住宅ローンの見直しは、ローン開始から間がないうちに行うのも普通なのです。今の住宅ローンに固執する必要はまったくありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長期固定に繰上返済」がトクをしない理由

損な繰り上げ返済

 

住宅ローンの返済を考えるときに、今や長期固定とセットで「常識」のように唱えられているのが、「繰上返済」です。繰上返済をすれば、ローンの支払総額を減らせることは事実ですが、広い視野で考えてみると、この「長期固定」と「繰上返済」という組み合わせは「矛盾」しているともいえます。

 

それでは具体的に、次の2つのケースを見てください。ケース①では、3年後に100万円を繰上返済し、ローン終了を21ヵ月間短縮しました。その短縮した21ヵ月間、今度は毎月の返済額に当たる11万2133円を金利3.3%で毎月積み立てた場合、21ヵ月後には240万円になります(受け取り時20%課税)。一方のケース②では、返済を始めて3年後に同じく100万円が手元にありますが、こちらは繰上返済をしませんでした。その100万円を同じく金利3.3%で32年間運用をした場合、246万円になります(受け取り時20%課税)。
①と②を比べた場合、35年後の貯蓄残高では、②が6万円ほど多くなっています。これは、たとえローンの支払いが多くても、繰上返済しなかったほうのお金が増えている可能性があるとい

 

うことを示しています。金利が高くなればなるほどケース②の運用益は上がりますから、金利が上昇すると予測して長期固定ローンを選ぶのであれば、繰上返済をしない(その分を運用する)ほうがいいということになります。「住宅ローンの金利が上がる」ということは、「繰り上げしなければその分のお金を運用で殖やせる」ということを意味します。

 

長期固定のローンを選んだ直後に、仮に金利が急上昇したとしても、ローンの返済には影響はありません。「返済は早いほうがおトク」と考え、繰上返済をしてしまうと、「そのお金を高い金利で長期間運用できる」という可能性を手放してしまいます。将来にもらえる利息ですから、今はなかなか実感しづらいですが、運用によって得られる利息についても無視してはいけないと思います。繰上返済をしなければ長期間運用できるので、さまざまな選択が可能になり、それだけ利回りも期待できます(②では、32年間もの運用で利回りを3.3%としていますが、経済成長から考えたら相当少なく見積もっているほうです)。

 

運用で増やせないのに長期固定はおかしい

繰上返済をすることによって、返済期間は短くなり、総返済額が少なくなることは間違いありません。しかしながら、「総返済額が少ない=トクかどうか」は別の話です。同時に「手元の資産が一時的に減る」ことや「その資産の運用益を手放す」という点にも、気づいてほしいと思います。仮に損得を議論するならば、「繰上返済をしなかったお金がどのくらい増えるか」まで含めた広い視野で考えるべきなのに、その点を無視して考えてはいませんか?

 

また、「そんなに都合よく資産運用で利益が出るとは考えられない」というのであれば、それは金利水準がそれほど上昇しないと言っているのと一緒ですから、住宅ローンの金利を全期間固定にすることにも疑問を抱かなければならないはずです。「住宅ローンの金利だけが上昇して、私たちの給与水準も、お金を殖やす金利も上昇しない」というのは世の中のお金の流れからすると、相当におかしな話です。とはいえ、資産運用に懐疑的であったり、面倒に思っていたりする人に「積極的に運用しましよう」と言っても、なかなか実践しづらいでしょう。

 

繰上返済をしないよりも、すれば利息負担が減るのは事実ですので、繰上返済をするもしないも、個人の「考え方」次第です。しかし、そうしたからといって決して、トクをしているとは考えないほうが賢明でしょう。

 

※住宅ローンに悩んだら


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