「健康住宅」「シックハウス」「自然素材」???

健康住宅のイメージ

 

自然素材を使って健康な住まいづくりを

住宅の断熱化、気密化が叫ばれる一方、十分な換気が行われないことが 原因で、シックハウスなどの新たな問題が出てきました。素材の選び方からも、快適で健康な住まいづくりについて解説いたしましょう。

 

シックハウス症候群(化学物質を含んだ建材などで起こる健康障害)を防ぐ素材や建材を使った家を健康住宅と総称します。シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどのVOC(揮発性有機化合物)は法律で使用が制限されています。自然素材の建材は割高で施工に手間がかかりますが、健康への被害は最小限に抑えることができます。床・壁・天井などに使う仕上げ材は面積が大きく、人に直接触れるものなので、アレルギーを持つ人や乳幼児がいる家庭はできるかぎり健康に配慮した素材を使うようにしましょう。

 

 

シックハウス 症候群とは、室内の空気の質が悪く、居住者の健康に問題を引き起こす可能性がある建物や家屋を指す用語です。室内空気質の低下の原因には、カビ、ラドン、揮発性有機化合物 (VOC)、および換気不良が含まれます。シックハウスに住む人は頭痛、呼吸器系の問題、アレルギー反応などの症状を経験することがあります。室内の空気質を改善するには、問題の原因に対処し、換気を改善することが重要です。これには、カビの除去、ラドン漏れの密閉、および VOC 放出製品の使用の削減が含まれます。

 

シックハウス症候群は、同居環境によって受けられる心理的および生理的不調の症状の総称です。対策としては、以下のようなものがあります。

 

【居住環境の改善】
空気を浄化するための通気、換気、照明、温度調節などが重要です。

 

【健康的な生活習慣】
十分な睡眠、適度な運動、健康的な食生活が大切です。

 

【軽減】
ストレスを感じる原因を特定し、それを軽減するためのストレス対策を理解しましょう。

 

【カウンセリング】
心理カウンセラーや精神科医に相談することで、シックハウス症候群に対処するためのアドバイスを受けることができます。

 

やっぱり自然素材がいいのか?

自然素材の代表は無垢の木と左官材料
欧米の自然素材も輸入されている
自然素材にも有害なものはある
化学物質を添加した自然素材は要注意

 

自然素材とはどんなもの?

人工的な化学物質を使わない自然素材の代表には、無垢の木と土や漆喰などの左官材料があります。他に瓦やタイル、畳、和紙、柿渋などもあります。その安全性が注目され伝統的自然素材が見直されていますが、欧米からもさまざまな自然素材が輸入されています。

 

たとえば100年の歴史をもつリノリウムです。意外と知られていませんが、このリノリウムは自然素材ながら抗菌性や耐磨耗性、薬品にも強く、病院や学校などの施設で使われています。ほかにも、洋風漆喰や自然塗料・壁紙、石材など、自然素材から生まれた仕上げ材だけでなく、コルク・羊毛・古紙などを利用した断熱材も注目されています。

 

有害な自然素材もある

自然素材でも人によってはアレルギーを生じるものがあります。漆、ヒバ油、テレビン油(マツの油脂)がよく知られています。しかし、これらとは別に注意が必要なのは、化学物質を添加された自然素材です。化学糊が添加された塗り壁材や、多量の農薬を散布して育てたイグサを使った畳、防ダニシートが縫いこまれた畳などは注意が必要です。

 

自然素材を知ってつきあう

自然素材は、製品ごとにばらつきがあり、施工に技術が必要で、手間や工程、コストがかかります。しかし、それに勝る利点があるのです。シックハウスに対する安全性や住み手に与える癒しの効果です。

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通風と換気で空気洗浄を!!

昔の日本の住まいは、隅々まで風が行き通る構造であったため、湿気がこもりにくく、建物を健全な状態で保っていました。しかし、時代とともに住まいの構造や壁紙などの素材、生活スタイルは変化し、建物の施工・維持にはさまざまな化学物質が使われるようになってきました。

 

そこで起きた問題が、「シックハウス症候群」と呼ばれる症状です。建物に使われた化学物質が擇発して空気中に漂い、それを吸い込むことで自立神経に異常をきたすようになったといわれています。そのほか、ダニやカビ、花粉や勣物の毛なども原因とされています。適切な換気を行い、湿気や化学物質の軽減につとめることが健康住宅をつくるカギとなります。

 

 

材料を選んで化学物質を最小限に抑える

自然素材の化学物質

 

2003年に施行されたシックハウス法により、ホルムアルデヒド系建材の使用制限が規定されました。建材としては、F☆☆☆☆からF☆まで4ランクあり、F☆は内装仕上げに使用できません。建物に使われる有害化学物質は、建材となる合板や集成材、壁紙を張る接着剤などにも多く含まれます。危険なものは最初から使わないのが一番です。家具類に使用している薬剤、掃除用洗剤など身の回りの日用品の成分も確認して、安全性が高いものを選ぶようにしましょう。

 

シックハウス法

シックハウス法は、日本の建築における新築住宅の建築質の基準として定められた法律です。「シックハウス」とは、居住環境が不快な状態を指し、居住環境が悪いことで、健康に影響を与えることを指します。居住環境が良い住宅を建設するために、新築住宅の建築質の基準を定めることで、居住環境の改善を図ることを目的としています。

 

シックハウス法によって、新築住宅に対して、空気質、温度、湿度、照明、騒音などの基準が設けられています。これらの基準に適合することで、居住環境が良い住宅を建設することができます。また、空気質、温度、湿度、照明、騒音などの条件を満たすことで、居住者の健康や快適な生活を支援することができます。

 

 

自然素材との上手な付き合いを

健康住宅の基本は、自然素材を上手に取り入れることが大切です。化学物質が含まれている可能性がある床・壁・塗料は、すべて代替となる自然素材があります。日本で古くから使われていた建築材には、調湿機能をもつ物も多くあります。しかし自然素材を採用しても、湿気や結露のためにカビやダニが発生しては何にもなりません。風通しを良くするためには、通気用の牛窓を2方向に設けましよう。なるべく間仕切りのない空問をつくり、家全体に風が行き渡るようにしましょう。また、仕切るときは引き戸を用いたり、欄間を設け、風を遮らないようにするなど、通風・換気を考慮した設計が大切です。面積が人きい壁には、調湿効果が高い素材を選びましょう。珪藻土は脱臭性と有害な揮発性物質を吸着する働きがあり、施工が簡単で、さらに耐火性や断熱性もありおすすめです。独特の香りをもつ月桃紙は、吸湿・通気性に優れ、防虫・防カビ効果もあります。素材の持つ効果や機能を、最大限生かせる場所に取り入れるようにしましよう。

 

また、床下や壁の内側にも湿気対策が必要です。いくら吸湿性のある素材を用いても、ずっと湿った状態か続いてしまうと、痛んで耐久性が弱くなったり、カビやダニの発生源になったりします。床下の湿気は、防湿フィルムや防湿コンクリートでシャットアウトしましょう。壁の湿気は、内側に通気層を設け、換気を行うスペースをつくることで乾燥状態を保ちましよう。特に注意したいのは、天然素材とうたっていても、防腐剤や施工用接着剤に有害物質が含まれている薬剤を使用しているケースがあるります。施工業者に、施工方法について確認することも重要です。

 

無垢板単層フローリング

無垢板単層フローリングは、天然の木材を使用したフローリングの一種です。「無垢」とは、木材に対して、塗装や染色などの加工を施していないことを意味します。無垢板単層フローリングは、木材の天然の風合いを活かした、自然な雰囲気を演出することができます。また、木材を使用しているため、温かみのある感じがあり、足元に心地よいものです。さらには床暖房にも適しており、温かい足元を提供することができます。また、汚れや汚れが目立ちにくく、綺麗に整えることができます。ただし、無垢板単層フローリングは、木材を使用しているため、湿気や温度の変化に敏感で、変形しやすいです。また、汚れや汚れに対しても、柔らかい木材なので、汚れが染み込みでなってしまいます。天然木の単層板は裏面に防腐剤などが塗っていないものを選びましょう。湿気に弱いため、湿度の調整と結露防止が大切です。

昔からある100%稲わらの畳床はコスト高のため、最近は合板を稲わらで挾んだ畳床に、中国産の天然い草を編んだものが多い。和ブームの影響もあり、畳を使う住宅も増えている。

アクリル系クロス

アクリル系クロスは、建築断熱材として使用される断熱材の一種です。アクリルとは、アクリル樹脂のことを指します。アクリル系クロスは、アクリル樹脂からなる断熱材で、様々な形状や厚さ、密度などあります。プリントに水性インキを使用し、焼却時にも塩化水素ガスやダイオキシンなど有毒ガスが発生しません。また、アクリル系クロスは建築断熱材として使用することで、建物の断熱性を高めることができます。アクリル系クロスは、良好な断熱性能を持ち、熱を遮断し、室内の温度を安定させることができます。さらには耐久性にも優れており、長時間使用することができます。アクリル系クロスは、建築断熱材として使用することで、冷暖房費を削減することができ、省エネルギー効果もあります。

F☆☆☆☆複層フローリング

F☆☆☆☆複層フローリングは、木材を使用した高品質なフローリングの一種です。「F」は、フローリングのグレードを表し、「F☆☆☆☆」は最高のグレードを意味します。複層フローリングは、合板の表面に薄く削った天然木を貼ったもので、床材として広く普及しています。F☆☆☆☆はホルムアルデヒドの放出量がもっとも少ないものです。F☆☆☆☆複層フローリングは、複数層にわたっているため、耐久性が高く、長期間使用することができます。また、上層には、高級な木材を使用し、表面には高級な木材の被覆層を施しています。これにより、高級な木材の質感と耐久性を持つことができる。さらには、F☆☆☆☆複層フローリングは、熱伝導性が低いため、床暖房にも適しており、温かい足元を提供することができます。また、汚れや汚れが目立ちにくく、綺麗に保つことができます。ただし、比較的高価なため、一般的な住宅には導入するのは困難であり、施工も専門業者に依頼する必要があります。

紙クロス

通気性があり結露が出にくい。プリントやエンボス加工のバリエーションが豊富なので、好みのものを選びやすい。耐水性が低く、水拭きができないものもある。

オレフィン系クロス

食品の包装材などに使われる水性オレフィン系樹脂が主成分となっています。焼却時にも有毒ガスが発生しません。オレフイン系クロスは、建築断熱材として使用することで、建物の断熱性を高めることができます。オレフイン系クロスは、良好な断熱性能を持ち、熱を遮断し、室内の温度を安定させることができますまた、オレフイン系クロスは、耐久性にも優れており、長期間使用することができます。また、オレフイン系クロスは、建築断熱材として使用することで、冷暖房費を削減することができ、省エネルギー効果もあります。

コルクタイル

コルクタイルは、天然のコルクから製造される断熱材のことを指します。コルクタイルは、比較的軽くて取り付けも簡単で、断熱性能も優れています。遮音性、保温性があり、床暖房などにも最適です。コルクタイルは、天然の素材であるため、環境に配慮した断熱材として人気があります。また、断熱性能は優れており、熱を遮断し、室内の温度を安定させることができます。コルクタイルは、屋根や壁などに取り入れることができ、断熱性能を高めることができます。また、コルクタイルは、吸湿性も速く、室内の空気を乾燥から守ることができます。ただし、コルクタイルは、湿気に弱く、湿気がたまると、断熱性能が低下します。そのため、コルクタイルを使用する場合は、適度な通風や湿気対策を行うことが重要です。

布クロス

通気性があるので結露が出にくい特性があります。高級感・重厚感を感じられるが、ホコリを吸着しやすいので、ハウスダストのアレルギーなどには注意が必要です。

珪藻土

珪藻土は地下水や湖沼などから採取される天然の土の一種です。七輪や耐火煉瓦などに利用されてきた泥土です。すぐれた調湿機能で結露やカビを防ぎ、化学物質の吸着、消臭効果などもある。クロス貼りに比べると2~4倍ほど高価なため、家主が自分で壁塗りをして人件費を抑えるケ-スもあります。 珪藻土は、火山活動や河川などによって形成された火山灰や砂岩などからなり、母岩となる物質が火成岩や堆積岩などであることが多いです。特に建築や土木工事において、断熱材や耐震性などに優れた特性を持っています。 珪藻土は、高い吸水性を持ち、水分を吸収することで、空気中の混在を調整します。また、高い耐火性を持ち、火災に強いことから、建物の耐火性を高めるために使用されることがあります。また、珪藻土は断熱性にも優れており、熱を遮断し、室内の温度を安定させることができます。また、珪藻土は、高い耐震性を持ち、地震の際にも建物を守ることができます。珪藻土は断熱性、耐震性、耐火性などの優れた特性を持っています。

 

☆の数で建材の安全性がわかる!!

建材はJIS(日本工業規格)にもJAS (日本農林規格)にも、統一されたホルムアルデヒド放散量区分が設けられています。もっとも安全なのは、「F☆☆☆☆」と表示された製品。「F☆☆☆」と「F☆☆」は使用面積を制限され、「F☆」は使用禁止とされています。

 

揮発性有機化合物とその健康影響

揮発性有機化合物 健康影響
ホルムアレデヒド

短期:のどの炎症・目や鼻の刺激・流涙,呼吸器の不快感

 

長期:発がん性(IARC・2Aランク恐らく発がん性がある)

アセトアルデヒド

短期:蒸気は目、鼻、のどの刺激・目に侵入すると結膜炎や目のかすみ

 

長期:直接接触で発赤・皮膚炎・高濃度蒸気吸入で麻酔作用・意識混濁・気管支炎・肺浮腫

キシレン

短期:目や気道への刺激・精神錆乱・疲労・吐き気など中枢神経への影響・意識低下や不整脈

 

長期:頭痛・疲労・脱力感など神経症状・不整脈

p-ジク囗ロベンゼン

短期:のどや目の刺激,頭痛,疲労,精神錯乱

 

長期:頭痛・不眠症・興奮などの精神症状

エチルベンゼン

短期:目・皮膚・気道の刺胤肝臓・腎臓の機能低下・損愡

 

長期:肝臓・腎臓・肺への影響

フタル酸ジブチル

短期:目・皮膚一気道への刺激・下痢など消化管への影響

 

長期:皮膚炎・内分泌(ホルモン)の指摘あり

クロルピリポ

短期:目、鼻、のどの刺激・眠気・脱力感

 

長期:肺、中枢神経影響・眠気・めまい

エチルヘキシン

短期:急性中毒で綰瞳・意識混濁・けいれん等の神経障害・高濃度蒸気・粉塵の吸入でけん怠感・頭痛・めまい・悪心・嘔吐・腹痛などの甲毒症状

 

長期:重傷で縮瞳・意識混濁など・皮膚への付着で紅斑・浮腫

テトラテカン

短期:高濃度で麻酔作用・皮膚の乾燥・角化・亀裂

 

長期:接触哇皮膚炎

ダイアジノン

短期:重症の急性中心で繦瞳・意識混濁・けいれんなどの神経障害

 

短期:目・皮膚一気道への刺激・誤飲により吐き気・めまい・目の痛み・流涙・結膜炎

 

ニセモノの健康住宅の現実

国が認めた工業化製品の資材や工法では、本当に良い家は建てられないことは、最近広く認知されています。本当に良い家とは、工業化製品ではなく、自然素材を使った手造りの家です。ところがここでさらに問題です。自然素材や無添加をうたう家でも良い家とは限らないのです。昨今の健康ブーム、自然なもの、無添加なものに注目が集まるのは、住宅業界も例外ではありません。

 

「無添加」「自然素材」「天然素材」といったキャッチフレーズの家は、星の数ほど存在しますが、その家が本物の健康住宅とは限りません。健康とうたえば、健康ブームだから高く売れるという業者側の都合だけで、そこには、根拠も何もないのです。こうしたブームに便乗し、健康になるかどうかの証明もできないのに、己の利益のために売ろうという姿勢は、国が認めた々とお施主様をごまかして家を売る方法と何ら変わりはありません。

 

健康被害が気になる珪藻土

内装の塗壁で一番多いのが珪藻土です。なぜなら、塗壁材の中でも材料費が比較的安価だからです。珪藻土には接着剤(アクリル)が3割から7割も含有されています。5~7年もするとこの接着剤が酸化し、劣化します。さらに、劣化して壁から剥がれた珪藻土の細かい粒子は空気中を浮遊し、吸い込むと肺に刺さり肺がんになる危険性が高いのです。劣化や、肺に刺さると言ってもピンとはこないかもしれませんが、実は多くの方がその現象を体験しています。スーツ等で壁に寄りかかった時に、白い粉が付いたことはないでしょうか。その状態が、まさしく接着剤の酸化であり、アスベストの健康問題と同じなのです。

 

また、アクリルを含んだ珪藻土は、数年すると酸化現象から黒いシミのようなカビが発生することがあります。こうした劣化を招く珪藻土は、寿命が短いことから短期間でのリフォームを必要とするのです。実は、自然素材で建て替えた2軒目の私の家も、当初は珪藻土を使用しました。「珪藻土は自然素材だから大丈夫」との思いで内装の壁と天井の全てに使いましたが、結果として数年で、壁は傷だらけ、手垢だらけ、特によく触れるスイッチ周りは爪跡だらけ、壁にもたれかかれば白い粉塵が服に付くという有様で、新築からわずか8年で漆喰に塗り替えた苦い経験があるのです。

 

ただ、漆喰なら全て大丈夫なのかといえば、それもノーです。なぜなら、ほとんどの漆喰には5%ほどのアクリルが含有されているからです。ほんの5%でもアクリルは劣化します。劣化すれば珪藻土と同様の現象が起こるのです。ではなぜ、わざわざ早く劣化するアクリルを混ぜるのかといえば、施工性が良くなり、施工費を安価に抑えることができ、利益を得やすくなるからです。

 

また、アクリルが含有されると、劣化が早いだけでなく、表面にアクリル膜を張ることから調湿性能も劣ります。調湿性が悪くなれば体感も不快に感じるばかりでなく、消臭効果を損なうなど、性能にも支障をきたしてしまうのです。ちなみに、一般的な健康住宅の外壁に多く利用されているのは、一見すると塗壁のように見えるアクリル系の吹付です。見た目は塗り壁でも材質はペンキです。ペンキでは水の侵入を完璧には防げず、資材の劣化が早いことは、第1章の説明ですでにご理解いただけたと思いますが、ペンキには他にもまだ問題があります。

 

まずは、ペンキに含まれるアクリルは、珪藻土と同じように数年で劣化し、粉を吹きます。しかも、ペンキは水に弱いだけではなく、太陽光の紫外線にも焼けやすく、色褪せして短命なのです。さらに、調湿性能がないことから、ペンキと外壁の間に湿気が溜まり、数年で剥離します。古い建物で、ペンキが人の肌にできる水膨れのように、プクッと浮いている状態を見たことのある方は、多数おられると思います。あのような現象は、ペンキに調湿性能がないことから起きるのです。

 


「自然素材」の意味わかっていますか?

自然素材の意味

 

家づくりは人生の中でそう何度も取り組むものでもないでしょうから、最初の段階は分からないことだらけでしょう。どんな家にしようかを考える一つのきっかけにしようと、多くの人が住宅展示場に足を運んだり家づくりの雑誌を開いてみたりします。そこで、「このキッチンが素敵!」とか「やっぱりロフトが欲しいよな」などと思いを巡らせます。どんな家にするか、夢ばかりが膨らむ時期かもしれません。

 

しかし、あれも欲しい、これも欲しいという進め方では、住まいに何を求めるかという根幹を見失ってしまいます。この先ずっと、そこで家族と暮らしていくことを考えれば、自分自身として、家族として、住まいに何を求めるか、という価値の置き所をまず明確にしておく必要があります。住まいという空間は、そこで暮らす家族にそれだけ大きな影響を及ぼすものです。その象徴の一つとして素材が挙げられます。住まいに何を求めるかという価値の置き所を見定めた結果として、どのような素材で空間を形作るのかが決まります。そして、その素材によって形作られた空間は、そこで暮らす家族に身体的・精神的なさまざまな影響を及ぼすものです。

 

さて、家づくりを始めようとするあなたは、これから建てようとする住まいに何を一番に求めますか。この点は人それぞれでしょうが、身体的・精神的な安らぎを求めるという方は多いのではないかと思います。住まいにそうした安らぎを求める方には、素材としていわゆる自然素材を勧めることが考えられます。メンテナンスフリーの工業製品に慣れてしまうと、手入れの欠かせない無垢材は、厄介な素材かもしれません。しかしそれは、製品次第です。

 

無垢材で構成された空間で暮らすのと、コンクリートに覆われた空間で暮らすのと、何かが違うと感じませんか。とりわけ敏感な子どもにとっての影響は大きく、最近は子どもの育ちの観点から小中学校で木造校舎をつくる動きが広まっています。

 

 

国産材の活用

国産材

 

木材を利用する背景には、日本の山を守る、という理由もあります。山というのは、森林です。森林はさまざまな動植物の生息の場として、生物多様性保全や地球環境保全という環境面での役割を果たしています。土壌には木々が根をしっかり張っていますから、土壌には大量の雨水を貯め込むことができます。そのため、水源涵養や土砂災害防止といった役割も果たしています。ところが、林業の担い手不足で山が荒れてくると、そうした機能が損なわれてきます。2011年度林業白書によれば、1980年には全国で約19万人だった林業就業者は、2010年には約8万人と、半分以下にまで減っています。「山の危機」は以前から叫ばれていますが、改善にはまだまだ、供給者と需要者双方の努力が必要です。

 

需要者側にできる努力の一つが、国産材を利用することです。国では公共建築物や住宅での木材利用を促そうとさまざまな施策を講じています。林業白書によれば、昭和55年に3456万㎡だった木材の国内生産量は、ここ数年、1800万㎡前後で若干上向きとも思える推移を見せています。国産材を用いた家づくりには、そうした状況の改善にひと役買うという社会的な意義もあるのです。住まいをつくるという行為は、自分自身と家族の10年後、20年後にも思いを巡らせるものです。その思いを、日本の山にも向けたいものです。ただし、自然素材を売り文句に掲げた住宅には十分に注意してほしいと思います。それがブランド化しているのか、坪単価を聞くと、例えば70万円と、非常に高いのですが、それだけの価値のあるものなのか、疑わしい面もあるからです。

 

自然素材であれば、木材の品質管理や使い方が極めて重要です。しかし、この手の住宅にもそこに、難点が見られる場合があるのです。例えばこの手の住宅ではよく、程度の問題はあるとしても木材の割れや反りは自然素材である以上は仕方がない、自然素材の住宅がいいならそれを許容するはかない、といわれます。しかし、それは本当でしょうか。私の見る限り、割れや反りの原因は、乾燥や製材プロセスに問題があることが多いことです。それに、使い方の誤りも見られます。

 

木材には表と裏があることをご存じでしょうか。丸太から切り出した板材を考えてみてください。脇から見ると、年輪の断片が分かるかもしれません。この年輪の中心部、つまり幹の中心部に近いほうが裏に当たります。木材の表は木材の裹より外側にあるので、幹の中で若い部分に当たります。そのため、切り出してからの収縮が木材の裏より大きくなります。板材が反る場合には、木材の表が縮むように、木材の裏が伸びるような方向に反り返ります。

 

こうした木材の表と裏の存在やその違いがもたらす反り方を、自然素材を売り文句に掲げた住宅を手掛ける住宅会社がどの程度理解しているのか、疑問に思うような木材の使い方を目にすることがあるのです。

 

 

自然素材は正しく使う

壁の仕上げ材にも疑問を感じる場合があります。この手の住宅ではよく、壁を珪藻土で仕上げます。この珪藻土とは、多孔質の風合いと断熱性や調湿性といった機能とで人気のある塗り壁用の土の一種です。きちんと仕上げるには下地づくりが必要なうえ、塗りと乾燥の繰り返しが欠かせないことから、施工には手間の掛かる素材ともいえます。ところが、建築家が好んで利用するようになって一般にも広まると、人気に目をつけたメーカーが、施工に手間の掛からない珪藻土を売り出すようになりました。秘密は、接着剤です。その成分を混ぜることで、丹念に重ね塗りをしていかなくてもきれいに仕上がるような製品を開発したのです。
しかし、これを果たして、珪藻土と呼んでいいのでしょうか。自然素材とみなしていいのでしょうか。化学物質を前提にした製品である以上、違うと思います。確かな素材を、正しく使う自然素材の利用を考えるのであれば、それが最低限求められます。素材の確かさ、使い方の確かさ、そこにしっかり目を向けることで、本物か否かを見極める必要があります。

 

 

内装こそ自然素材

無垢の木、漆喰、石や上など、自然素材を使うことが基本である。これは、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造のいずれの工法にも当てはまる。また、病院、教育施設、マンションなど、大規模建築の室内に自然素材を使うことも重要であり、ニー世紀の建築の新しい方向といえる。

 

 

①ドア枠、窓枠、幅木、回り縁などの造作材。こういった所に使う素材が無垢材か張りものかで、本物の家かそうでないかが分かれる。ヒバやタモの無垢材は、建物の品格を上げる。

 

②床材はタモ、ナラ、ヒノキ、青森ヒバ、カリン、チークの無垢フローリング。集成材では無垢とはいえない。本物の木を使うと、足への感触が素晴らしく気持ち良いし、使うほど味わいが出てくる。本物とはそういうものである。

 

③階段の段板はタモ、ナラ、ヒノキ、青森ヒバ。惻板も蹴込板も、タモ、ヒバなどの無垢材。ここに無垢の木を使い、しかも材種にこだわる設計者や施工会社はほとんどない。良くても集成材である。だからあえて無垢を勧めたい。

 

④和室の見える柱(化粧柱)は当然、

 

このこだわりの仕様を、他との比較検討の材料にしていただければと思う。しかし、どうしてもまだ合板を使わざるをえない場合があり、すべて無垢という意味では、これでもまだ完全ではない。タイル張りの下地に無垢の木を使うと、タイルが割れることがある。床暖房が入る場合、無垢のフローリングの下地には、伸縮を少なくするために合板を使うことがある。防水工事の下張りにも、伸び縮みの少ない建材を使う必要がある。さらに木造3階建てには、耐震性を考えて、建築基準法上、構造補強材として構造用合板を使わざるをえない。また、予算上すべての建具を無垢の木で作るわけにはいかない場合もある。